腰椎圧迫骨折におけるコルセット装着下体幹トレーニング

目次

はじめに

腰椎圧迫骨折(VCF)は、高齢者の骨粗鬆症や外傷によって生じ、疼痛や姿勢変形、ADL(Activities of Daily Living)低下を引き起こします。治療においては、骨癒合と痛み管理を両立させるためにコルセット装着と適切なリハビリテーションが不可欠です。本記事では、コルセット装着下で安全に行う体幹機能トレーニングの実践方法とエビデンスを紹介します。

コルセット装着の役割

  • 前屈制限と過伸展保持
    コルセットは脊柱の前屈を制限し、過伸展位を保持することで骨折部への圧迫負荷を軽減します UMMS
  • 疼痛管理
    骨折初期の痛みを抑制し、早期に立位や歩行練習を開始できる環境を整えます Yeungnam Medical Science

リハビリテーション開始時期と基本プログラム

  • 開始時期
    骨癒合の進行状況および患者の疼痛コントロールを基準に、装具装着下での本格的なリハビリは発症後8〜12週頃から開始します PMC
  • 基本プログラム内容
    1. 背筋(背部伸展筋)強化
    2. 姿勢再教育(プロプリオセプション訓練)
    3. 人間工学的動作指導
    4. バランス能力向上訓練 PMC

コルセット装着下での体幹トレーニング実践方法

1. 安全性の確保と評価

  • 装具が適切にフィッティングされているか確認
  • 疼痛スケール(VAS)と機能的指標(ODIなど)で毎回評価
  • 過度な前屈・回旋動作を避ける

2. 初期段階:低負荷体幹活性化エクササイズ

  • ブリージングエクササイズ
    息を吸いながら胸郭を拡げるイメージで深呼吸を繰り返す
  • 軽度のアイソメトリック収縮
    仰臥位でコルセット装着のまま、腹横筋・多裂筋を緊張保持(5–10秒 × 10回)

3. 中期段階:動的体幹強化エクササイズ

  • プランク(肘支持)
    体幹部を一直線に保持し、20–30秒 × 3セット
  • ヒップブリッジ
    骨盤を持ち上げ、背部伸展筋に負荷をかける(10–15回 × 3セット)

4. 発展段階:機能的・バランス訓練

  • 四つ這い対角線挙上(Bird Dog)
    順に対側の手足を伸展し、体幹安定性を高める(左右各10回 × 3セット)
  • 不安定面上での体幹練習
    バランスパッド上でのスタンディングバランス保持(30秒 × 3セット)

5. 注意点

  • 疼痛が増悪した場合は即中止し医師と相談
  • 長時間のコルセット連続装着による筋力低下を防ぐため、適切な装着時間管理を実施
  • 臨床経過に応じて装具の見直しを行う

エビデンス(効果)の裏付け

  • コルセット装着下でのリハビリは、8〜12週以降に背部伸展筋強化と姿勢再教育を組み合わせることで後方椎体変形の進行を抑制し、バランス機能を改善することが示されています PMC
  • 動的コルセット(Spinomed®など)は、従来の3点式装具に比べて疼痛軽減およびQOL向上に有意な効果を示し、合併症も少ないという報告があります PMC
  • 体幹筋量は脊椎圧迫骨折後の椎体圧潰進行と関連し、BIAによる体幹筋量評価は転倒リスク評価にも有用とされています ResearchGate

まとめ

腰椎圧迫骨折治療において、コルセット装着下での段階的な体幹トレーニングは疼痛管理と機能回復に効果的です。患者の骨癒合状態と疼痛評価をもとに、安全性を確保しながら背部伸展筋強化やバランス訓練を組み込むことで、ADL改善と再骨折予防に寄与します。

参考文献

  1. Toniolo L, et al. Rehabilitation in osteoporotic vertebral fractures. Clin Cases Miner Bone Metab. 2007;4(2):147–152. PMC
  2. Meccariello L, Muzii VF, Falzarano G, et al. Dynamic corset versus three-point brace in the treatment of osteoporotic compression fractures of the thoracic and lumbar spine: a prospective, comparative study. Aging Clin Exp Res. 2017;29(3):443–449. doi:10.1007/s40520-016-0602-x. PMC
  3. Ikeda N, Ishii S, et al. Association between Trunk Muscle Mass and Progression of Vertebral Collapse in Patients Treated Conservatively for Vertebral Compression Fractures. Prog Rehabil Med. 2024;9:20240037. doi:10.2490/prm.20240037. ResearchGate
  4. University of Maryland Medical Center. A Patient’s Guide to Lumbar Compression Fractures. 2025. UMMS
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